私たちのできること CSP

ニコニコフリマin南三陸町

 2012年8 月27 日早朝、朝日が差し始めた頃、横浜清風高校インターアクトクラブ※(以下、IAC) の生徒20 名とドンドンアップ広報部の3名を乗せたバスは宮城県南三陸町に向けて動き出した。2012 年5 月から準備してきた「ドンドンダウン×横浜清風高校IAC 共同ニコニコフリマ」企画が、ついにこの日、南三陸町にて行われるのだ。
 この日を迎えるため、横浜清風高校IAC の生徒は準備に取り組んできた。しかし、果たして被災地で待っている方々に喜んでもらえるのか…震災から2 年目の夏が過ぎようとしているとき、それぞれが期待と不安を胸にバスに乗り込んだ。
 清風高校IACは、もともと地域活動をはじめ国際交流・ボランティア等の活動クラブで、東日本大震災直後には地元保土ヶ谷駅前で街頭募金を8 日間行い、およそ130 万の寄付金を集めて日本赤十字社に寄付をしていたという。
しかし、実際に被災地を訪問することが出来ていないことに疑問を感じていた彼らは、「東北の被災地支援に関して何か出来ることはないだろうか…?」と考えていた。
 弊社もまた、震災直後から200か所以上もの被災地にて古着支援の「ニコニコフリマ」を続けてきたが、時間の経過とともに変化し続けていく被災地のニーズにおいて、今出来ることとはなんだろうと支援の在り方を模索していた。
 ドンドンアップと清風高校IACは、横浜市にて開催された国際ボランティアや東日本大震災について考える大型イベントにて出会った。この出会いによって、弊社にとっては、このような関心を持つ被災地から遠く離れた町の子供たちに、被災地支援とは何か、またそのノウハウを伝え経験し学んでもらう機会を提供することが、今できる新しい支援の形ではないだろうかとの思いに至り、ニコニコフリマの共同開催を企画。清風高校IACからもぜひやらせてほしいとの快諾をいただき、実行する運びとなった。

 開催場所は、横浜からの移動距離等を踏まえ宮城県に的を絞った。「東日本大震災暮らし支援ネットワーク」様の情報協力を得て、南三陸町のはずれに位置する、神割崎キャンプ場を会場にした。
 甚大な被害を受けた報道があった南三陸町中心部には多くのボランティアが訪れたが、中心部から車で20分ほど離れた神割崎まではなかなか支援の手が伸びず、町の中でも一番復興が遅れている地域と言われている。現在でも、日用品は週に数回くる移動販売で賄い、衣料品の買い物などは滅多にできなくなってしまったという。また、18件ある神割崎の仮設住宅では8割が65歳以上と、ご高齢者が多い場所だ。
 開催が決まってからは、生徒たちは地域商店街などに協力を仰ぎ、ポスターなどで古着の回 収を呼びかけた。同時に、古着の仕分け方を学んでもらう。これは、頂いた古着をそのまま持って行き置いてきただけでは、被災地にとってはかえって迷惑となってしまう為だ。「必要なものを必要な分だけ持って行き、余ったものはゴミも含め全部持ち帰ってくる」という、弊社が行ってきたニコニコフリマのやり方を指導した。
この取り組みは保土ヶ谷の住民の方々の強い関心を集め、地元の高校生たちを応援する気持ちも後押しし、予想以上に寄付をいただいた。関東圏における東北への関心は薄れてきていると思われたが、実際は情報がないだけで潜在的な関心はまだまだ健在であるように感じた。
最初は仕分けが追いつかず戸惑っていた生徒たちも、次第にコツを掴み作業効率をあげていった。
今回の1 ヶ月の古着回収活動で集まった衣類の総重量約2.4t。目標の2t を超えた。その中で、実際にニコニコフリマに提供した衣類の量は600kg。残りの1.8tについては「被災地には持っていけない」状態のもので、それらは全て弊社が引き取り、東南アジアへ輸出しリユース・リサイクルした。そしていよいよ8 月27 日、神割崎へと出発。
 車中では修学旅行気分ではしゃぐ生徒もいたが、最初に南三陸町防災対策庁舎で黙祷をするためバスを降りると、初めて目の当たりにした被災地の光景に言葉を失うばかりで、ただ呆然と立ち尽くしていた。
黙祷し、それぞれに写真を撮ったりメモを書いたりしながら神妙な面持ちで骨組みしか残っていない建物や、遠くに見える瓦礫の山を見つめる姿が印象的だった。

 その後会場となる神割崎キャンプ場に到着し、すぐにフリマの準備が始まった。今回は、この日の夕方、そして翌日の朝の2回に分けてフリマを開催した。平日のため、仕事などで時間帯によっては来られない人もいるため、実験的にスケジュールを組んだのだ。
 生徒たちは会場準備チームと広報チームに分かれ準備が進む。会場設営と同時進行で、広報チームは近隣の仮設住宅を1件1件回って、フリマの開催を宣伝した。
 なお、今回は参加費100円、もしくはご家庭の古着を持ち込むことを条件とした。これは、仮設住宅避難者、在宅避難者などに差をつけないためであり、また、必要以上に支援されたことへの感謝や申し訳なさを軽減し「気軽にお買い物気分を楽しんで」いただくことを狙ったものだ。
いよいよ会場の準備が完了。各仮設住宅から集まった被災者の方々は、小高い丘に広がる衣類や服飾雑貨を見てワクワクした表情を浮かべていた。「それではお楽しみください!」という声で始まったニコニコフリマ。来場者は皆我先にと衣類を選び袋に詰めていた。その様子に当初は圧倒されて自分が何をしたら良いのかも分からずにいた生徒たちも、ご高齢のお客様とのコミュニケーションに次第に夢中になり、自然と声を出し、走り、またたく間に動きが変わっていった。
 また、当日はレストランのカフェスペースを借りて休憩所としてお茶を出していたが、そちらも大盛況。笑い声が飛び交っていた。
 その日の夜は生徒たちの発案で神割崎仮設住宅にお住まいの方々を招待して座談会が 開催された。横浜のお菓子をお土産に配ったり、津波の当時の体験談を聞かせていただいたり、あたたかい親睦の時間となった。
 2 日目は朝から快晴で日差しが強い中、すでに30分も前から行列が出来ている中、早速9時~11時の第2回目開催に向けて急ピッチで準備を進めた。前日と続けて来た人も、評判を聞いて駆け付けた人も大勢が楽しみに開場を待っていた。
 神割崎の住民の方々と生徒は本当に孫とおじいちゃん、おばあちゃんという表現がぴったり。だんだんと「帰らないでほしい」という声が聴かれるようになっていた。

大盛況だったニコニコフリマは無事終了。
会場の清掃後、いよいよ帰る時間になってくると、近隣の仮設の住民の方々が徐々に駐車場に集まり始めた。皆、生徒達の見送りがしたいという。その数は約30人に上り、生徒たちも驚いていた。
中には、「今までいろんな支援をしてもらってきたけど、こうして見送りをしたいなんて思ったのは 初めて。また来て欲しい」と涙ぐむおばあちゃんもいた。
別れ際に握手を何度も交わし、バスが走り出しても窓を開けて生徒達は「ありがとうご ざいました!」と叫び、大きく手を振り続けた。

 ニコニコフリマ1日目来場者数は78名、2日目は123名で合わせて201名の方々に来ていただいた。参加料金100円の合計は寄付も含めて12,100 円となり、こちらは南三陸町戸倉地区復興に役立てていただくために寄付とした。
   生徒たちがここで得たものは大きかったと言えるが、これからどう繋げていくかが要となってくる。今回の出会いが途絶えぬようにと、個人個人で仮設住宅の方の住所を聞いて、手紙でのやりとりもしていくと嬉しそうに話していた。  様々な支援の形がある中で、支援をしたいと思っていても何をしていいのかわからないという高校生と私たちは出会い、ニコニコフリマの共同開催に至った。これが復興の礎として被災地に少しでも希望を与え、また未来ある高校生たちの大きな成長の糧となることを願う。

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